過去問を知り、学校を知る。今回は早稲田実業学校中等部です。

首都圏にある早稲田大学の付属校の中で唯一の共学校であり、渋谷駅から50分、国分寺駅から徒歩8分のところに位置しています。

直系の早稲田大学高等学院中学部と異なり100%ではありませんが、95%以上の生徒が早稲田大学へ進学する権利を得ます。

早稲田中学校が早稲田大学への進学を【あくまでも選択肢の一つ】としているのに対して、早稲田実業では将来大学の中核を担う人材の育成が目指されているのです。

先述した通り共学校であるため、早稲田大学への進学を希望する女子にとっては貴重な存在。例年、女子のほうがやや高めの倍率になります。2023年入試でも受験者数、合格者数とも男子はわずかに減りましたが、女子は前年並みでした。偏差値も男子に比べて5ポイントほど高くなります。

国語入試問題の特徴は、膨大な文章を読むわけではなく、大人向けともいえる文章を読み、自身の言葉で解答しなければならない設問も多いため、文章への慣れと語彙力を問われるものだといえます。

大問1 随筆

「夏井先生」として有名な夏井いつきさんの「季語は時代の証人」から出典。

文字数は約1600字。読みやすい文章ですし、ボリュームも多くありません。とはいえ新聞に掲載されたエッセイが元ですから、大人向けの文章です。内容をどこまで理解できるかが大きく分かれそうでもあります。

そのうえで設問は多岐にわたり問題数もあるため、問題文を3分程度で読み、25分くらいかけてしっかり解答したい大問です。

では、問1。

文章中の空欄a~dに当てはまる文章を並び替えて答えます。

並び替えるので、与えられた4つの文章に順番が生まれるはずです。選択肢ア~エを見てみましょう。

空欄aの前の文章は「…次の手順で生まれる。」と終っています。ですからこの4つの文章で【季語が生まれる手順】が明らかになるのです。これを前提に選択肢をみていくと、ア、ウに「それ」という指示語があります。指示語が指す言葉が前に来ないと文章が成り立たないので、それぞれ前に来る選択肢があるはずです。一方、イの歳時記とは【俳句の季題を分類したもの】。ですからこの文章は最後にくると分かります。

残る選択肢はエ。「ある言葉を季語として俳句」=「ある言葉を季語とした俳句」、これがウの「秀句」とイコールであり、エ→ウが決まります。アの「それを季語とした句」=ウの「秀句」ですから、ウ→アが決まります。これでエ→ウ→ア→イが確定します。

迷う点はアとウの前後ではないでしょうか。確かにアの”それ”は「ある言葉」を指すので、エ→アでも意味が通じるように見えます。ですがエ→ア→ウとなったら、ある言葉を季語として誰かが俳句を作ったら、それが秀句であってもなくても、ほかの方がその季語を真似て俳句を作り、かつそれが全て秀句であるという意味になります。一方エ→ウ→アであれば、ある言葉を季語として誰かが俳句を作ったら秀句であった→これは良いと他の方も真似てその季語を使いだした→結果としてその季語が歳時記に納められた、となるのです。

文章としてつながりがおかしくないか、そして全体を読んだときに意味が無理なく通じるか。正確に見極めができるようになりたいですね。

問2ーⅠ。「万緑」の季語が表す季節を答えます。

この季語は夏の代表的なもの。よって季節は「夏」が正解です。知識として知っておけば10秒かからず解答できるでしょう。仮に知識として頭に入っていなくても、漢字から「緑の植物が生い茂る様子」は想像できるのではないでしょうか。

これを見て、もしかして春を想像された方もいるかもしれません。そこで、押さえておいてほしい点。季語の季節は暦に従います。夏の始まり、二十四節季の「立夏」は2024年では5月5日。これ以降は夏なのです。ですから、「新緑」も初夏の季語。俳句が出てきたときは、我々が日常でとらえている季節とは違うのだと、この機会に覚えていただけたら幸いです。

問2-Ⅱ。

自分の言葉で書くという、国語が苦手な方にとっては避けて通りたいほどの問題です。とはいえ避けては通れませんし、できそうなところから手を付ければ案外解き進めることもできるものです。

①②③と見たときに、③の漢字一文字に続く文字が「色」であることが分かります。ということは、漢字は色の名前です。ではこの俳句の中にある色を探します。

まず「万緑」の緑。これと対比される「何色かのもの」ですが、「吾子の歯」が白だと分かりますね。これで②③は解答できます。さて、「万緑」をご自分の言葉で表す①はどうでしょうか。

「緑」が「万」にあるので、緑がたくさんあるわけです。「見渡す限りの緑である」「一面に緑が生い茂る」など。漢字の意味を考えれば季語を意味を知らなくても解答できます。知らないからとあきらめないでください。

問3。高浜虚子の俳句、と言われて知識として定着している方は少数でしょう。ですが選択肢の俳句はどれも有名で、一度は見たことがあるものだと思います。落ち着いて、消去法を使いましょう。

アとエは松尾芭蕉、ウは正岡子規、エは小林一茶。どれも代表作といわれる句です。文学史は必ず問われると想定して、学習を進めてください。

問4。選択問題です。

我々が笑えないのは、誰か。コレラが怖いと蚊帳の中でご飯を食べていた人々です。どうして笑えないのか?その方々と同じことをしていたから。科学的知識がないと、何を恐れたらよいか分からない。だから効果のない対策を取ってしまう。それはいつの時代も同じことだと、傍線部を含む段落は述べています。

消去法など必要ない、一発で正解が分かる問題です。選択肢の文の長さに混乱せず、設問の意味を理解することを優先してください。

問5。またもや選択問題。

選択肢の後半部分はどれも大きな違いがありません。(オが熱量が高いのですが)ということは、前半で違いを見つける問題です。傍線部が含まれる段落を見ていきます。「季語の生き死には、時代の流れの中で、後の人々から判断されるもの」とあります。後の人々から判断される=今を生きる我々にどうこうできることではない。そして「淡々と今を詠む」ことしかできない。

「淡々と」はあっさりしていることや、落ち着いていることを表します。この問題も消去法は必要ありませんが、敢えて消去法にしてみましょう。季語を生み出すエ、訴えるイは明らかに違います。俳句、というテーマから自然や花鳥風月はもっともらしいのですが、この文章ではマスクやウクライナ危機などしか取り上げていないのです。

選択問題、とみるとついつい選択肢を読みたくなってしまう方も多いでしょう。でも、ちょっと待ってください。傍線部の文章をしっかり理解すれば、消去法に頼らなくてもより早く正解にたどり着けます。特にこの学校のように選択肢が長いと、見当をつけてから選択肢を読まないと混乱してしまいます。

「まず設問の意味を理解する」。くどいですが、これがどの問題でも一番重要です。

問6。

①は自らの言葉での記述問題。マスクが冬だけでなく一年中使われるようになったことは、経験として刻み込まれていることでしょう。この記述問題のポイントは、「コロナ禍」という言葉が出てくるかどうか。

この数年は「コロナ禍」が描かれた問題が必出している中学入試。時事問題を把握できているかは、どの教科でも問われてくると思ってください。

②もウクライナ危機について。「春灯」が表すものは何か?標的、ではないと書かれていますので気を付けて。読解において重要な「~ではなく○○」に正に当てはまります。標的ではなく、家族です。

③十二文字の抜き出し問題。これも時事問題への関心の高さが問われているようです。句の作者だけでなく、多くの人が~ている。それが現代の世相(世の中の風潮)を反映している。

Eの句の後ろには、句の意味と筆者の感想のみ。であれば、多くの人がどうしているのか、を書かれたのはEの句より前。「ところが~圧倒的多数を占めていた。」の部分です。

ここから十二文字を見つけるのは、それほど難度が高くはないでしょう。「平和を希求する」と迷っても、文字数が合いません。

設問の意味で絞り、与えられた条件で絞る。二段階で正解にたどり着きます。条件を正確に把握することは他教科でも求められます。早い段階で慣れておきましょう。

④十六文字の抜き出し問題。③と同じ二段階で考えましょう。「季語は世の中の変化に応じて~なる」のです。季語について述べられた文章を探します。Eの句の後ろには、やはり季語についての言及はありませんとなれば、答えはEの句より前にあります。

さて、このような時に一番先頭の文章まで戻って探す方。国語が苦手な方に多い傾向です。残念ながら時間ばかりが掛かるかのぼりましょう。

Eの句の後ろでないなら、Dの句の後ろからEの句の前まで。すると、「時代が生み出す~ラジオ番組を通してだった。」という文章があります。さあ、絞り込めたので条件【十六文字】でさらに絞る。十六文字に絞れる季語の記述は1つしかありません。

問7。空欄に入る二文字の抜き出し問題。

Xはウクライナ危機と世界が向かって歩き出せる方向、というふたつのキーワードが読み取れれば出てきますね。その言葉はEの句と同じ段落にあります。「平和」の二字。「戦争」に絡んだキーワードに対しては「平和」、とすぐ閃いてほしいところ。なぜなら、「平和を希求しなければならない」という人間性は、どの学校も生徒に求める姿勢であるからです。

Yのほうは、この文章全体の結論ともいえる部分です。この文章は季語について述べられていることは、もうお判りでしょう。特に、季語の生まれる経緯について、いくつかの俳句をもとに述べられている文章です。その経緯に重要な役割を果たすもの。もう何回も、文章の中に登場してきます。「ある時代に起こった禍根によって生まれた季語」「季語の生き死には、時代の流れのなかで…。」「時代が生み出す季語」「時代と季語が切り結ばれ」解答は「時代」。文章全体を読めていれば、難しい問題ではありません。

問8。本文全体の内容と合致するものを選ぶ選択問題。

これもまた、文章全体を読めていることが前提です。解答に時間が掛かりすぎるようであれば、最後に回したほうが良い問題です。何しろ選択肢の文章が長いので、どこにポイントを絞って考えたらよいか、混乱してしまう方も多いでしょう。ここで問題全体の折り返し地点くらいです。疲れ果てるくらいなら、次の大問にい取り掛かったほうが効率的です。

ここではあきらめず挑戦するものとして、解説していきます。

時間は掛かりますが、選択肢の句読点で区切り、その区切りごとに文章と合っていれば〇、違っていれば×、判断が難しいものに×をつけます。一つでも×が付いた選択肢は消去。

この方法で見ていくと、(ア)「多くの人がより良い・・・苦労している」。平和を希求するとはありますが、苦労している描写はないので×。

(ウ)「筆者のあきらめ」はどこにもないので×。しいて言えば「淡々と・・・しかない。」とあきらめと読んだ方もいるかもしれません。しかし、この「...しかない。」のは、季語に生き死にに対してであり、俳句が現実を変えるかどうか、ではありません。

(エ)「受け手に辛い現実を認識させ」。春灯のくだりであったように、筆者は俳句によって平和への希望を見出しているので×。

(オ)「一句一句は□の証。」なので、俳句一つ一つを評価する意味は薄れていないので×。

量より質

大問1を見てきました。与えられた文章は決して長いものではないものの、大人の文章を読み慣れていない方には、お話がころころと変わったように感じられ、「何が書いているのかわからない」となってしまうのではないでしょうか。

結果として、得点差が大きく開くテストとも言えそうで、もしかすると国語の成否が合否につながりかねない危険性もはらんでいます。

これは速読や解答のテクニックというよりも、まず大人向けの文章への慣れ。そして時事問題への関心度の高さという下地があって、ようやくすんなりと頭に入ってくるものといえます。おそらく大人でも、この問題にてこずる方は一定数いらっしゃいます。正直なところ、満点を取るのは難しい1問のように見えました。特に最後の選択問題は、時間を大幅に取られるでしょう。

普段の学習の注意点としては、まず大人向けの文章も読むこと。それから、社会にも通じますが時事問題に対して、なにかしら疑問を抱くほどの関心度の高さを持つように意識すること。

そして普段の模試や演習では、時間配分を意識しながら解くこと。漢字問題で何分かけるか、残りを大問一つに何分かけるか。これは場数を踏まないと身に付きません。積極的に時間を意識して学習していきましょう。