学校の特徴を知るための手段のひとつとして、過去問を解くという方法があります。その学校が望む生徒像が見えてきますし、お子様と学校の相性が分かります。

それでは2023年度入試問題を振り返りましょう。

早稲田中学校2023年度入試問題

新宿区馬場下町に位置する、早稲田中学校。当塾がある世田谷区野沢からは約1時間で通えます。

高校募集がない完全中高一貫の男子校です。2023年度入試では出願者が前年比7.1%と増加しました。私立大学付属校については、志願者の増減についてメディアによく取り上げられます。確かに志願者数の変動はありますが、こちらのような伝統と実績のある人気校に関しては難易度は志願者数に比例せず、変わりません。あまりそうした情報に囚われすぎず、しっかりとした事前準備を進める必要がある学校です。

国語の試験時間は50分。60点満点で、大問2問という出題形式でした。過去問の傾向通り、小説1題+説明文1題が出題されました。文字数は約8400字。問題数18のうち選択が10を占め、記述は2問。文字数や設問数からみると、時間が足りないことはありません。しかし出題文の内容、設問や選択肢の難しさを考慮すると、しっかり時間をかけて考える内容になっています。また、家族や友人がテーマになっている文章が出題されるのも特徴です。

大問1 小説

鷺沢 萠さんの『ウェルカム・ホーム!』からの出題で、読みやすい文章です。例えば桜蔭中学校2023度入試では、岩瀬 成子さんの『ひみつの犬』という児童文学から出題がありました。それに対し、『ウェルカム・ホーム!』は児童文学ではありません。2023年度に限らず、過去3年間に限ってもこの傾向は変わりません。こうした点からも、早稲田中学校が求めていること、お子様との相性が測れます。

登場人物は小学生の男の子と、彼の父親。二人と同居する、父親の友人タケパパとその友人(斉藤)美佳子。主人公はタケパパなのですが、文章Aで小学生の憲弘の作文が出てきます。文章Bではタケパパ目線で文章が語られることに混乱せず、登場人物の関係を正確に把握することが求められます。

それでは問1。抜き出し問題と選択問題です。抜き出し問題は傍線部の直前の段落にある15文字を抜き出します。上述した「主人公がタケパパである」ということが把握できていれば、解答は容易でしょう。選択問題は、傍線部直後にある「憲弘が物凄い目つきで父親を睨みつけて」という状況に合うものを選びます。

この学校の特徴として、選択問題が多いこと、その選択肢が4つではなく5つあることがあげられます。ですから他校の4つの選択肢の問題では間違わないお子様も、早稲田中学校の選択問題では絞り込みができても最後の2択で間違える、ということが多いのです。

この問題に関しては「非難」と「憎悪」の言葉の意味が区別できれば、ⅱの選択だけで解答も可能です。文章の読み取りだけでなく、語彙力が問われている問題です。

問2。文章中のことばを使っての記述問題です。とはいってもキーワードが指定されているわけではないので、抜き出しではなく完全記述といえる問題です。

料理が苦手で、ハンバーグをきれいには作れなかった美佳子のつぶやき。英弘との会話のあと、「タケパパ」こと毅は美佳子の言葉を思い出します。この美佳子の言葉に彼女の本音があります。彼女は「男女関係なく、家事を担当する人がいたらいい」と思いながらも、「フツー」は家事が女性の役割だと捉えています。だからこそ、ハンバーグさえ失敗する自分は家事能力がない、それが女性として恥ずかしいことだと考えているのです。

注意していただきたいのは、「」書きの英弘の考えを、美佳子の考えと混同しないこと。英弘の考えは、美佳子の本音ではあります。ですが、美佳子はその考えは「フツーじゃない」と思っているからこそ、英弘が男性で、自分(女性)とは違うと思っているのです。

問3。これは難しく感じる方が多いのではないでしょうか。

問2でも出てきましたが、「フツー」か「フツーじゃない」かは、この文章のポイントです。美佳子は自分の本音「家事ができるのは男女問わない」ことが「フツーじゃない」と思っています。毅は憲弘の作文を「フツーの人」が読んだら、英弘一家が「フツーじゃない」と誤解されないか心配していました。

毅はそれらを踏まえ、「フツーじゃない」と周囲から思われるかもしれない英弘一家も、美佳子も、自分も、お互いにとっては「フツー」の存在なのだと言いたかったのです。これは傍線部のあとに続く毅と美佳子、英弘の対話から読み取ります。「フツーじゃないか?」「フツーだと思う」のやりとりですね。

問4。これは問1が理解できていれば解ける問題です。英弘の息子、憲弘は傍線部1の直前の段落「思いやりがあって空気が読める子」でした。そして、その文章はこう続きます。「・・・空気が読める子の父親(=英弘)は、①思いやりはともかくとして空気を読める男ではなかった」。また、美佳子が料理ができない自分を女性としてダメだと落ち込む様子に対して、「②あっさりと、とても軽快に」男女は関係ないと思う、と答えるのです。この①②の要素が含まれた選択肢が正解になります。

問5。文章Aの最初の1行、最後の2行だけでも、正解にたどり着けます。「お父さんが二人いる」「一緒に住んでいなくても家族」憲弘は自分の家族を”そのまま”の姿で受け入れ、愛情を持っているのです。

問6。これも少し難しく感じる問題です。選択問題ですが、選択肢は5つ。しかも、問5より難易度は高いです。手がかりは文章Aです。憲弘は作文の中で、父親(英弘)と毅(タケパパ)がいて、母親がいない自分の家族に違和感は抱いていません。「フツー」の家族として受け入れています。この点は、問5でも触れました。そうすると選択肢ウに絞れそうですが、イと迷うかもしれません。しかしイでは憲弘が大人たちに失望したことになっているので、不適切です。

問7。大人3人の会話を聞いて、小学生の憲弘がつぶやきました。大人の難しい話に対して素直な感想をもらした憲弘がおかしくて、けれどそこには大切な子供への愛おしさやほほえましさがあったのです。イの選択肢に愉快があるので紛らわしいかもしれませんが、感嘆がふさわしくありません。

じっくり・丁寧な読解が必要になる

大問1の難しさは、大人の目線からみた小学生への思いが書かれている点です。お子様には共感しづらく、例えば問7のように大人3人の心情を問われた場合、ここまでの登場人物の心情をどれだけ正確に読み取れているかが正誤の分かれ目となります。

ひねった問題がない分、正確な読解ができるかが問われている試験問題といえます。文字数、問題数とも多すぎることはないので、じっくり丁寧に心情や場面変化を追っていくことに力を注ぐ訓練が必要でしょう。この点が、文字数が膨大でも解法のテクニックで対応できる学校との違いです。

それでは、大問2は次回にご紹介します。