前回に引き続き、慶應義塾中等部2026年入試問題を振り返ります。
大問1 物語文 問8
25文字以上30文字以内、という短い記述です。この字数では1文しか書けません。その中に「~こと」という結果と、その結果になった理由を書く必要があります。
なぜ理由が必要なのか、確認しましょう。
物語文の主題は「人物の気持ちの変化」です。そして気持ちの変化には必ず「理由」が必要です。
もし、普段の生活の中で、友達や家族が何もないのに突然気持ちが変わったら?きっとびっくりしますよね。そんな不思議な出来事はテストの解答にはなりません。
みなさん聞いたことがあるはずです。「記述は話の内容を知らない人にも分かるように書く」、と。
また、記述問題を解くときには、「何が聞かれているか」把握することはもちろん、その聞かれていることの「数」を意識することが大切です。この問題であれば「~こと。」に続くように、と指示されているために「結果」を書くことに意識が集中し、「理由」が抜けたために部分点しかもらえない、ということがよく起こります。
物語文の記述では「誰が・前の気持ちから・理由があって・今の気持ちになって・こうした」という要素が入る必要があります。このうち問題文ですでに書かれている部分を減らし、残った部分を書きます。今から自分か書く記述が、何個の要素を入れなければならないか、必ず書く前に確認しましょう。
そうすることによって要素が足りないことも、書きすぎることもなくなります。
文字数指定は実によく出来ていて、「求められている要素数を、余分な修飾語など書かず書くと、指定文字数になる」ようになっています。
では問題を見てみます。『おれは、ようやく歩き出した』から読み取れること。「誰が・前の気持ちから・理由があって・今の気持ちになって・こうした」のうち、「誰が・こうした」があるので、「前の気持ちから・理由があって・今の気持ちになって」の3つの要素を書けばよいのです。
そしてこの時、必ず今の気持ちから探します。記述はいつも、終わりから探します。
今の気持ち=一緒のクラスになれてよかったと卒業までにいえるだろうか(最終行)
⇒小路力輝くんに対しての気持ちであることに注目です。「理由と前の気持ち」はこれに関連していなければいけません。
理由があって=力輝くんは学校の運動会でもカッコよさを大事にするのではなく、何事にも一生懸命だから全力で取り組んだ。
前の気持ち=力輝くんとは口をききたくなかった。ずるいと思っていた。
要素は取り出せました。では「~こと」につながる部分から書きましょう。そのままを書くと文字数が足りません。コンパクトに「仲良くなりたいと思った」(こと)として11字使いましょう。
次は理由と前の気持ちです。字数はあと19字。コンパクトにまとめます。「ずるいと思っていた力輝くんは何事にも全力だったので」これでは25字もあります。さあここからが頑張りどころです。あと6字削りましょう。
「力輝くん」は削れません。「ずるいと思っていた」、はどうでしょう。中学受験生の皆さんなら「嫌いだった」とするところでしょうか。嫌いは言い過ぎですので、「苦手だった」くらいの温度感への言い換えが適当です。これで4字削れました。
「何事にも全力だったので」。こちらは単純で、「何事にも全力だから」。ここも言い換えで2字減らせました。
これで「苦手だった力輝くんは何事にも全力だから仲良くなりたいと思った」。30字の記述が出来ました。
ちなみに上級編では、「全てに全力な姿を見て、力輝くんと仲良くなりたいと思いはじめた」ともできます。まず、理由(何事にも全力だから)を先頭に持ってきます。それから気持ちが変わったことを示すために「思いはじめた」としました。これによって、「苦手だった」という前の気持ちをわざわざ書かなくても、それまでの気持ちとは変化があったことを表現できます。そのままだと字数がオーバーするので、「何事にも」は「全てに」と1字減らしました。
算数が得意なら、記述は書ける
さて、ここまで記述解答の書き方を見てきました。要素を数えたり、字数をいちいち数えたりすることによって、過不足なく、書き直しも最小限にして、なるべく無駄な時間を使わずに解答を作成できるのです。
当塾にいらっしゃるお子様の多くは、「算数は得意なんだけど国語が…」と仰って体験授業にいらっしゃいます。けれど国語は算数と全く異なる教科ではありません。実際のテスト問題でも、「どれだけ情緒的になれるか」「どれだけ想像できるか」ではなく、「どれだけ論理的になれるか」「どれだけ分解できるか」が大切なのです。
算数の問題を解くように、数えながら。文章量が多すぎて何も考えれなくなりそうだったら、分けられるところを探す。その読み方はトレーニングで強化できます。
次回は説明文を解説します。