国語の成績を上げるために

国語の成績を上げたい。それには何が必要かと考えた時、いろんな要素が思い浮かびます。

今回はその中で「知識」と「読解力」に注目してみます。

実際の入試問題から

2022年都内国立女子大学入試の国語問題です。ここでは現代文のみ取り上げます。

日本のフランス哲学者の著書の一部から出題されています。内容はフランスの法学者が“身体の法的扱いをめぐって”論じた著書についてです。大学入試問題とあってボリュームもありますし、哲学者が書かれた「法についての文章」でありながら、身体がテーマの一部であるため現代医学の要素も入っており、決してとっつき易い文章とはいえないでしょう。

この大問1には問1〜7まで設問があります。問1〜5までは読解力、問6は論述力、問7は語彙力(知識力)を必要とします。

「知識力」

これは努力の結晶と言えると私は思っています。長文読解はいわば国語の「花形」。得点比率も大きく、みなさまがこの問題への対応力を高めたいと考えていらっしゃいます。そして当然、私もこの力をつけることを主目的に授業を行なっていきます。

その一方で、例えば漢字の読みであるとか、書き取りであるとかは、一見地味な問題です。配点も大きくはありません。それでもこれはいわば国語の基礎であり、その問題への対応力は、生徒さんご本人の日々のコツコツとした努力に掛かっています。これは日本語に限った事ではありません。英語にしても、フランス語や北京語にしても、単語力は重要です。覚え方も地道にコツコツやっていくことは変わりません。

けれどこの力がないことには、特に難易度の高い文章を読みこなすことができません。単純に、見知らぬ、あるいは慣れない言葉の羅列が続くような文章は理解することが難しいのです。これは脳の仕組みの問題であり、生徒さんご本人の能力のせいではありません。ですから脳の負担を減らし、難解な文章を理解していくためには、どうしても語彙力が必要なのです。そしてそのためには日々コツコツ、言葉の知識力を鍛えていくしかありません。

一昔前であれば、多くの家庭で新聞を取っており、学校の教師も「新聞を読みなさい」と指導していたものでした。特に小論文対策として、〇〇新聞からよく出題されるという理由で購読する新聞を変更するご家庭もありました。現在では、新聞購読が一般的ではなくなりつつあり、こういった姿勢で取り組むご家庭は減りました。生徒さん方は読書という方法で文章に触れる機会を確保することが一つの選択肢になるでしょう。

読書以外では、過去問に触れることもオススメです。今回は大学入試の問題を取り上げていますが、決して高校生以上でないと読めない文章ということもありません。文章量も1日の学習時間の中で読めるボリュームなので、1冊の本を読むことが時間的制約で難しい生徒さんには効率的とも言えます。

問7の漢字読み書きは(a)から(e)までありますが、「遡る」「拘泥」以外は中学生でも十分対応できるのではないでしょうか。日々の積み重ねの一つとして、こうした問題に取り組むのも良い刺激になります。

読解力

さて、問1から問5までの読解力問題を見てみます。先述の通り、この文章では「フランスにおける身体の法的扱い」を論じています。

盗まれた手の被害者を救済する道がないことについて、どうしてそうなってしまったか。どのように解決したらよいのか。筆者の説明を題材となった書物の内容に沿ってまとめよーこの問1を解いていきます。

題材の書物の内容に沿ってまとめるので、筆者の言いたいことを論じた部分にはもちろん正解はありません。ではまず、被害者を救済する方法はなぜないのか、題材の記載を拾います。同じ段落に「フランスの法律では身体やその一部を物として扱い、所有権の対象とすることを拒否している」とあります。であるから、手を盗まれた被害者は所有権を主張できないのです。それなら所有権を主張できれば、この被害者は法によって救済されるわけです。ではどうすれば手の所有権を主張できるのか?

さらに読み進めていくと、そもそもヨーロッパの法制度はローマ法が基礎となっており、20世紀になるまでは身体は人格に包括されていたので、所有権の問題は起こらなかったと記述されています。ところが医療の発展に伴い、人格から身体の一部が離れたため(輸血や臓器移植によって)、その前提が翻されてしまったのです。この問題を解決するため、題材書物では「身体を端的に物と認め」「所有に関する枠組みに置き直す」ことを提案しています。これをまとめることによって、問1は解答できます。

大学入試問題とあって一瞬身構えると思いますが、着実に問われていることを問題文と照らし合わせていけば、解答を導き出すことができます。これは中学受験、高校受験でも同じことです。必要なことは問われていることを理解する力、それと長い文章の中から「何について書かれているのか」を分解する力だと思うのです。元々人間の脳は物事を理解する時、「チャンク(固まり)」にして捉えるようになっています。問題文を前に、全てを同じように読もうとするとどうしても理解が進みません。問題文をいくつかの固まりにわけ、筆者の言いたいことを掴んでいきましょう。

二つの力を鍛えよう

この大問1の長文読解問題を解くには、知識(語彙)力も読解力も欠かせません。知識力は問7の漢字読み書きで得点を取りこぼさないためにも勿論必要なのですが、同時に長文を読んでいく抵抗を和らげてくれます。例えばサッカーをするにも、いきなりゲームに参加しても活躍どころか、もしかするとケガをしてしまうかもしれません。まずはボールに慣れたり、ランニングや筋トレなどの地道な基礎練習を経て、ようやくゲームという花形で結果を出せることは言うまでもありません。

地道な努力は一人ぼっちでは辛いかもしれません。すぐに結果が出ないときは、モチベーションも上がりにくいかもしれません。基礎練習という地道な努力と並行して、ゲームという長文読解にも取り組んでみて、自分の今の力を適時知ることは、モチベーションアップに一役買ってくれるでしょう。一緒に長文読解に取り組んで、一歩一歩確実に成長していきましょう。一人で辛い思いを続ける必要はありません。