慶応義塾中等部の今年の入試問題を振り返る3回目。今回は、小4・小5になって急に国語で点数が取れなくなる問題とあわせて考えます。

「小4・小5の国語の壁」とは

小4・小5になって、急に国語の偏差値が下がった……。そんなお悩みはありませんか?

それはお子さんが成長し、文章が『抽象的』になった証拠です。この問題は日本に限ったことではありません、英語圏にも、「Fourth-Grade Slump(小4のつまずき)」という言葉がある通り、教育における大きな問題なのです。

この問題が生じるには、いくつかの理由があります。先ず、テキストに登場する単語や文章が小3までの「具体的」なものから、小4以降の「抽象的」なものへと変化します。小3までに「具体的」な言葉の語彙力が十分に蓄積されていないと、「抽象的」な言葉への変化についていけません。なぜなら、「抽象的」な言葉を説明する際に「具体的」な言葉に言い換えるからです。

また、文章を読むことへの慣れがほぼできていないと、「抽象的」な文章を読むことは相当な苦痛を伴います。なぜなら、「具体的」な文章であれば単語を読む(見る)だけである程度の意味がつかめていましたが、「抽象的」な単語を読む(見る)だけでは何のことか分からず、かといって文章を読む習慣はほぼついていないので、結果『何が書いてあるのかサッパリ分からなかった』ということになり、国語嫌いにますます拍車がかかります。

慶應義塾中等部2026年入試問題 説明文から

この問題は抽象的表現から始まります。『人生には時折「あの時に」という…』。これは主題の提示ですが、文章を読み慣れていない、また比喩表現に慣れていないと「あの時に、だけで筆者が最後まで言いたいことを書いていない!」と戸惑うお子さんがいらっしゃいます。

文章を読む進めると、『まさに人種のサラダボールにどっぷり浸かり…』。人種のサラダボールとは?(サラダボールの意味を知らないと既に理解しがたく感じるかもしれません)どうしてサラダにどっぷり浸かるのか?もうこの辺で、国語嫌いなお子さんは情報が多すぎて、思考が止まってしまいます。

「まさに」は副詞で「ちょうどその通り」や「たとえて言うと」です。ですから「まさに」より前の文章を受けて、それをまとめた言葉が来る。それが『人種のサラダボール』だったのです。

つまり、どっぷり浸かったのはサラダボールではなく、筆者がアメリカの高校で勤務されていたころの環境を指しているのですね。

また、このあとに夏目漱石の『草枕』の一部が引用されています。こうした文章校正も、文章を読み慣れないお子さんを惑わせます。「どうして突然話題が変わったの?」「登山中は何も考えられなかった、と書いてあるのに、山路をのぼりながら、考えたと書いてある。どっちなの?」

こうした質問を投げかけてくれるお子さんは、決して国語ができないのではありません。ただ、文章を読み慣れていなくて、けれど良い点数をとるために、全力で問題を読んでいるだけなのです。

一言一句読み逃すまいと、初めから終わりまで必死で読もうとしてくれる。ですが、実は文章には「強弱」があって、しっかり読み込むべきところと、さらっと軽く読むべきところが分かれています。

また、文章はもともと一つ一つの文が連なって塊となったもの。ですからその塊ごとに読んでいく必要があります。これが、文章を読み慣れていないお子さんにはなかなか難しいのです。このようなお悩みは集団塾では顕在化しづらいため、改善も難しい。

全ての文章を集中して読んだあまり、問題を解くころには飽和状態になって、「何が書いてあったか思い出せない」状況になるのです。これはあまりに可哀想なことです。

選択問題を解くためのポイント

では問6の内容正誤問題を解いてみましょう。ア~カの選択肢について、それぞれ内容にあっているかどうかを答えなくてはいけません。記述問題ではないですが、細かな読解ができていないと回答できない問題です。

選択問題の基本は「2つ以上に分ける・後半から判断する」です。小4以上になると、選択肢そのものが長くなってきます。緊張しているテスト中に、通して読んでも判断は難しいのです。どの教科でも、「なるべく早く、できるだけ簡単な方法で」解くことが必要です。

選択肢ア。読点が打たれていないので切りどころに悩むかもしれません。一旦「住み慣れた~するべきである。」を判断しましょう。住み慣れた環境を離れる、ということは簡単にいうと引っ越しです。が、本文には「慣れ親しんだ環境を飛び出す」とは書いてありますが、「日本にいてもそこに異文化がある」とも書いています。ですから引っ越すことが必要だとは書いていないのです。答えは2ですね。

選択肢イ。後半の「右脳を磨く」は良いのですが、前半の「人間がAIに勝てない~」は逆ですね。企画力は人間にしかできない技だと書かれています。これも2ですね。

選択肢ウ。後半は本文にそのまま書かれていますね。前半は、「同質の者同士で話し合っても・・・」と「異質な・・・期待してほしい」から、異質の他者との刺激がクリエイティビティを生み出すことが書かれていることが分かります。これは1です。

選択肢エ。これは前半後半とも全く書かれていないことです。よって、2が正解です。

選択肢オ。文中に「以心伝心」という言葉があるので、後半は判断に迷うかもしれません。しかし前半の「言語不信社会」は明らかに違います。むしろ、「日本文化を特徴づけているとされる言葉」は多くあるのですから。正解は2です。

選択肢カ。「イノベーションは研究室から・・・」を含む段落に「人間関係から生まれる」ことも、「異なる知見・・・化学反応が生まれることに期待する」と書かれています。正解は1です。

駆け足で見てきましたが、細かく確認すること=難しいことをするわけではないことを、おわかりいただけたでしょうか?問題はあくまでも、「できるだけ自分に負担を掛けずに解く」ことが、成功の秘訣です。