15000。

これは、小学生が覚えている標準的な語彙の数と言われています。

20000~40000。

これは、中学受験でスムーズに難関校の問題を解くために必要だと言われている語彙数です。

中学生以上はこれに古文や漢文の単語、英単語とどんどん求められる数が増えていきます。

そのため、数字だけ見ると途方もないように思えてきます。

当塾の中学生や高校生も、「まだこれだけしか覚えていない。」とよく不安を口にしています。

実際のところ、語彙力は国語に関してどのくらいの影響があるのでしょうか?

例えば中学受験では、熟語の知識そのものが問題として問われることがあるので、しっかりとした語彙力は得点に直結します。ただ、どの程度の比重を占めるのかは志望校次第となりますが。

一方高校生以上になると、熟語の知識も問われることはありますが、その比重がぐっと下がってきます。単純に語彙力のみで正解できる問題が減る代わりに、高い語彙力がないと読みこなせない長文読解が出てきます。ですので結局のところ、小学生でも中学生でも、そして社会人になってからも、語彙力の重要度は変わらないと私は考えます。

ですが、「私には高い語彙力がある」と言い切れる方がどのくらいいらっしゃるでしょう?

生徒さんと音読していて、語彙の意味を質問されることは常です。私自身、読書などの場面で意味を知らない言葉に出会うことがあります。どれほど語彙力を高めたとしても、「わからない語彙は一つもない」なんて状況には、なかなかならないと思うのです。

ですから語彙力を高めることと同じくらいに、「単語の意味が分からなくても読める力」が重要であると考えています。

小4の壁

それまでは国語は得意だったのに…。どうして急に苦手になったのだろう?

そのようにご本人や親御様が感じられるようになるのは、文章の難易度が上がった証拠です。これまでの日常生活で「無意識に」身につけてきた語彙力だけでは、対応出来なくなってきたのです。他にも「何となく読み」でも対応出来なくなったということもありますが、これはまた別の機会に触れたいと思います。

学年が進むにつれて文章の難易度が上がるのは自然なことですが、それに個々の語彙力が追い付いているとは限りません。それでも小学校高学年になるまでは、周囲の大人の言葉やメディアに乗っている言葉を吸収し、その知識で対応できる文章に取り組むことになります。中には運よく読書が好きで、触れたことのある言葉が多いことがプラスに作用しているお子様もいらっしゃいます。

そしていよいよ難易度の高い文章に向き合う時期が来た時、「日常から得られる知識」だけでは太刀打ちできないことに気づかず、(急に長文読解ができなくなってしまった!)とショックを受けてしまうのです。

語彙力が足りないためなのか、ほかの原因があるのか、まずそのアセスメントが大切です。範囲のないテストで、語彙や漢字の得点は安定して取れていますでしょうか。普段の会話の中で、これ・あれ・それ・どれなどの代名詞ばかりではなく固有名詞や単語を使って言いたいことを伝えてくれているでしょうか。

語彙力が足りない時

語彙力がない、と実感した時、どうすれば良いでしょうか。何よりもまず「語彙を日常的に増やさなければいけない」と意識することです。

どのような場面でも新しい言葉には出会えますが、テスト以外では立ち止まらずに通り過ぎることが出来てしまいます。【言葉】という存在を意識しなければ、語彙を増やすことはできない。この現実に向き合う必要があります。

そのうえで、語彙力を向上するためにもっとも有名なのは読書です。やはり本の中には知らない言葉が沢山出てくるものですから、必然的に新しい言葉との出会いが増えます。ただ読書の内容にもよりけりなのは言うまでもありません。そして読書がとても嫌いなお子様にそれを強いることで、余計に国語や語彙に対する苦手意識を強めてしまうリスクもあります。

一方面白いことに、お子様方は人気マンガの中の難解な言葉をしっかりと言えます。子供たち同士で言いあうこともあるのでしょう。見るからに難解な本を強要されて読むよりも、親しみやすい学習マンガを読んでみるのもおすすめです。または自分の好きなマンガを読むときに、分からない言葉を通り過ぎないこと。そのためには親御様のお力が必要であることは言うまでもありません。言葉の意味を聞かれたら一緒に調べてほしいのです。それを口頭で教えてあげるのはスピーディーでよいことですが、お子様に定着するかというと疑問が残ります。

耳だけの記憶より、画像(字や辞書)、それを調べるための過程の記憶などが合わさったほうが、お子様の記憶の網には引っかかりやすくなります。

そしてもう一つ、語彙力が足りないと感じた時にどうすれば良いか。それが「推測する力」、それと「言い換える力」です。

長文読解で知らない言葉に出会ったとき、どうするか。まず、前後の文脈から探ってみる。次に、その言葉に漢字が含まれていたら、漢字の意味を考えてみる。漢字も見たことがない!と感じるのであれば、「へん」と「つくり」に分解して考える。どちらを知っていれば、それに関連する言葉を推測する。

推測した言葉を無理やりでもいいので、当てはめて読んでみましょう。文章として若干おかしかったら、「言い換え」をしてみます。

長文読解で大切なのは、筆者や作者の伝えたいことを正確に捉えること。ですから、本来であれば知らない語句に多くの時間を割くよりも全体の流れを把握してほしいのです。その一方で、知らない言葉が出てきたときの文章把握力は著しく下がる、という研究結果が複数発表されています。英文(つまり母国語でない文章)に至っては、98%知っている言葉で構成されていなければ60%以上の内容把握が難しいと示した結果もあるほどです。

いまは国語の長文読解のお話ですから、98%は大げさにしても、90%は知っている言葉で構成されたほうが内容把握しやすいでしょう。残る10%に関しては「推察する力」を見られているのだと思って取り組むしかありません。

語彙力は一気に増やすものではなく、少しずつ積み上げていくもの。そして学習の機会は机に向かうときばかりではなく、日常のなかにもいくらでもあります。些細な「分からない」を通り過ぎない意識、これがもっとも大切なのではないでしょうか。