国語という教科の中で、多くの生徒さんを悩ませる「記述問題」。今回は物語文の場合の記述問題の解き方を取り上げます。

実際の2024年度入試問題を例に見てみます。

渋谷教育学園渋谷中学校の国語、大問1の問5です。

物語は、13歳のミカが「もう一人のミカ」の存在を知り、離婚した両親への思いを巡らせながら、受動的な自分から変化していく内容です。問5で問われているのは、父親の言葉に対し「今更それはないんじゃないかと思った」のはなぜか、ということです。

もうご存じとは思いますが、物語文は『変化を描く文章』です。変化するものは題材によって異なりますが、そこには必ず登場人物の心情が伴います。仮に心情が直接述べられていなくても、例えば『空は遠くまで澄み渡っていた』『空は今にも雨粒が落ちそうなほど重く雲が垂れ込めていた』、と風景描写で心情を暗示することもあります。

そしてもう一つ重要なのは、変化するにはきっかけがある、という物語文の法則です。

勉強しようとしたお子さんが「もうやりたくない!」と突然言い出したら、ご家族はただ驚きますよね。お子さんにしても、突然ご両親が「もう夜ご飯を作りたくない!」とお家を飛び出してしまったら、呆然とするしかありません。しかし、ご安心ください。物語文、ましてや試験に出てくるような文章は、必ず行動や心情の変化のきっかけ(理由)が書かれています。

この変化の理由を正確に捉えることが、物語文の記述問題のカギになります。

では、実際の問題で見てきましょう。

まずは近くの文章から

これまでも何度かお伝えしている通り、物語文でも説明文でも、傍線部の近くの文章から解答につながる要素をさがします。

さて問題文では、傍線部の後ろの会話文がミカの次の行動へとつながる内容になっています。一方、傍線部の直前では「ずるい言い方だとミカは思った。」と心情が述べられています。

この「言い方」は「オレのことはいいんだよ」という父親の台詞を指します。ミカはこの台詞をずるい言い方だと感じたのですね。

ですが、父親の台詞は『ミカの気持ちの方が大切だ』という思いの現れです。それなのにどうして、ミカは『ずるい、今さらそんな言い方はないんじゃないか』、と思ったのでしょう。

内容が理解できても得点できないのは

物語文は苦手ではない、という生徒さんは比較的多いです。そして苦手ではない=得点できるわけではない、という生徒さんも多いのです。その理由は「自分の解答を客観視出来ていないから」。

この問題で書かなくてはいけないのは、ミカの気持ちの理由です。それはほとんどの生徒さんが理解出来ているのですが、解答にどこまでを書くべきかどうかが判断できない生徒さんも多いのです。そのため「父親の言葉が納得できなかったから」のような解答を書いてくれます。しかしこれでは部分点を取れたら良いほうです。

中学受験を目指す生徒さんなら、おそらく言われたことがあるでしょう。『記述問題の解答』は、文章の内容を知らない人が読んでも分かるように書かなければいけない、と。ところが記述問題が苦手な生徒さんは、文章の内容が理解出来ているからこそ、記述解答で書くべき要素が抜けてしまいます。つまり「自分の視点」と「解答を読む人の視点』が違うことが、理解できて表現につながるところまで達していないのです。

よくこうした点を、「論理的に考えられるかどうか」で測ることもあります。中学生以上であればその視点も良いと思うのですが、小学生にそれを求めるのはいささか時期が違うかもしれないと感じています。国語のお話から少し反れるのですが、他者の視点を想定して自己表現をする、というのは精神的成長の度合いに左右されます。13歳以下の生徒さんであれば、まだまだ成長の途中であることは全く不思議ではありません。ですからいわゆる「論理的思考、他者へのわかりやすい説明」の出来不出来を、その生徒さんの性質に原因を求めるのは、いたずらに生徒さんや親御様へのプレッシャーを強くしてしまうのではと考えています。

解答を作る訓練をする

もちろん正解して達成感は得ていただきたいので、どうするかというと「記述問題の解答を作る訓練」をするのです。

この場面は「夏休みがそろそろ終わろうとするころ~」から始まります。この場面の中で、ミカの気持ちを遡ります。

ミカは「今更~ないんじゃないかと思った」→「ずるい言い方だと思った」

父をずるいと感じたのはなぜ?→傍線部直前の「そもそも自分たちがここにいるのは父と母がそうしたかったから」

そう感じた言い方は?→「「父さんはどうしてほしいの?」に対し「オレのことはいいんだよ」」→父の思いは?→1行前にあるミカの考え「(父の)本心は前からここにいたミカに戻ってきてほしい」

この場面でのミカの思いを全て見つけました。この要素を出来事が起きた順番に並べましょう。

「そもそも自分たちのことを父と母で決めた→本心は前からここにいたミカに戻ってきてほしい→「オレのことはいい」と言ってミカの本心を言うことを求めたからずるいと思った」のですね。

これを字数に合わせて調整します。これもまた訓練していきます。

物語文では心情を追いかける

物語文では心情=感じたことがとても大切です。記述問題も、心情の変化を問う問題が多いです。

もし物語文を苦手とする方がいたら、どの気持ちが誰の気持ちかの見分けが苦手なのかもしれませんね。これもまた読み方の訓練をするしかありません。ただ数をこなしたり、読書をすれば解決するものではないと思います。

次回は、論説文の記述問題の解き方を考えます。