過去問を知り、学校を知る。慶応義塾中等部2023年入試、3回目です。

これまで大問1,大問2を見てきました。極端に長いこともなく、しかし基礎となる語彙力などの知識量、そして丁寧で正確な読解力が求められる問題でした。

それでは大問3を見ていきましょう。

大問③評論文

朝日新聞のコラム「天声人語」(2022年6月17日掲載)全文。

問1~問6まで設問がありますが、うち5問は知識問題です。なかには中学入試としては難易度が高いものもあります。

文章は長くなく、知識を問われる設問なので時間は掛からないのですが、国語試験問題の中でもっとも皆さんを悩ませた問題ではないでしょうか。

問1。文中に入る語句を選ぶ選択問題。選択肢は5個です。

あとに続く「好きだったのは・・・爽快だった。」の文章で、入る語句が『漢字』を指す、ということはわかります。しかし、選択肢に漢字がありません。ここで慌てずに、(漢字を言い換えている選択肢はどれだろう)と切り替えることが必要です。

では、選択肢を見ていきます。

1.ヒエログリフとは、古代エジプトで使われていた文字です。2.オノマトペとは、擬態語・擬音語・擬声語(すべすべ・ドカン・ニャーニャーなど)の総称です。3.絵文字はわかりますね。4.表意文字とは、一つ一つの文字が一定の意味を持っているもの。漢字がこれに当てはまります。『海』『星』など、見ただけで何を指すのかが分かります。5.和語とは日本古来の日本語。中国から伝わった漢語や欧米から伝わった外来語がこの反対語になります。6.アラビア文字はお分かりですね。サッカーW杯カタール大会の際には、よくテレビに出ていました。

答えは漢字を含む言葉である4.表意文字。これは知識問題なので、それぞれの選択肢の意味が分かり、1分もかけないくらいで解いていただきたい問題です。

この学校ではこうした知識問題は避けて通れませんし、全体に占める割合も多いため、学習は必須です。当然ながら、知識は一朝一夕では増えません。毎日5分でも、単語力を積み重ねていってください。

問2。当て字の具体例としてふさわしくないものを選びます。

当て字についての説明を冷静に読んでみましょう。漢字の音を借りて、その言葉を表しているのです。ですから、そうとは読めないものを探しましょう。

珈琲や天婦羅は見たことがあるかもしれません。一つだけ、どうやっても、どちらの文字もそうとは読めないものがあります。『演説=スピーチ』です。これは英語のスピーチ(speech)の日本語訳の一つです。

馴染みのない問題でも慌てずに、問題文を読んで「何を問われているのか」を確認して取り組みましょう。

問3。これは中学入試としては難しすぎるのでは、と感じます。

中国の故事の出典を問う問題ですが、興味があって中国の物語を読んでいる、もしくはマンガになったものを読んだことがある方以外は、全く見当がつかないと思います。

選択問題なので何も書かないのはいけませんが、分からないからと言って悩んでも分かる問題ではありません。潔く、ほかの問題で得点することを考えましょう。とても短い時間で相当数の問題を解こうとする以上、割り切ることも必要です。

正解は2.長恨歌です。高校漢文で習ったという保護者の方も多いでしょう。

問4。古今和歌集に収められている和歌を選択する問題。選択肢は5つ。

正解の句は非常に有名なもので、すぐに解答できる方もいると思いますが、ここでは敢えてこの句を知らないものと考えて正解にたどり着いてみましょう。

古今和歌集が平安時代の和歌集であることは、社会で習っているはずです。そうであれば、平安時代の言葉で書かれている句だと分かります。この中に知っている句がなくても、平安時代に書かれた文学と同じ言葉遣いのものを選べばよいということになります。

古文に触れる機会は教科書の中にありますので、社会の知識も活用して、平安時代の文学を思い出してください。正解は1.歌人として有名な在原業平が書いた一句。マンガやアニメで知ったという方も多い句です。

問5。空欄に入る物語名を選びます。

手がかりは ①東日本大震災の被災地(東北)である ②『』をたどる旅ができるものであることの2点。

①だけでも正解にたどり着けます。6つの選択肢の中で、東北地方が舞台なのは 5.奥の細道だけ。

②に関しては、ジャンルとして紀行文なのも5.奥の細道だけです。これは大問3のなかでは答えやすい問題でした。

ここまで3問、文学史を問われる問題が続きました。特に問3,問4は難問です。文学史は慶応義塾中等部入試では必出です。社会とも共通する部分が多々ありますので、コツコツ暗記に取り組みましょう。

試験中は、10秒考えて出てこない時はあとから戻って考えましょう。見当もつかない時は、気にせず次に進みます。

問6。内容理解の選択問題。解答欄記入の指示がありますので、その点も注意することを忘れずに。

ドナルド・キーン氏はアメリカ人として生まれ、日本文学を研究しました。右手に銃、左わきに和英辞典を抱えた写真もありますが、それは世界に衝撃を与えたわけではなく、日本兵の姿にキーン氏が衝撃を受けたのでした。画数の多い字が好きで、若いころは『奥の細道』をたどる旅もして、晩年は東京で過ごしました。「叡智」「憂鬱」など画数の多い字が外国人のお名前の表記に使われた、という記述はありません。

キーン氏は16歳の時に漢字と出会いました。

これは易しい選択ですね。1,5を指定通り解答用紙に書きましょう。

慶応義塾中等部らしい知識問題の真骨頂

大問3は慶応義塾中等部入試問題の真骨頂ともいえる、高度な知識問題でした。内容理解は易しい問題なので、ひたすら知識の積み重ねを問われています。

繰り返しになりますが、知識はコツコツ取り組むしか方法がありません。逆にいえば、地道な努力を積み上げれらる方かどうか、という点が問われているのではないでしょうか。慶応義塾中等部という素晴らしい学校を目指すからには、自主的な努力をできることが求められていると言えるでしょう。

次回は大問4、大問5を見ていきます。特に大問4は面白い問題です。