過去問から学校を知る。慶応義塾中等部2023年入試問題の2回目です。
1回目は大問1の物語文。難易度は普通でした。しかしスピードと正確性を確保するためには、語彙知識と丁寧な読解が必要です。
大問2はどうでしょうか。
大問②随筆文
筆者が教職に就いたばかりのころの回想から始まります。授業に参加したイギリス人留学生が「古典は、最も偉大な授業だ」と発言したことをきっかけに、「リベラル・アーツ」という言葉から、古典を学ぶ意義について考えることになります。
問1。「つたない」の意味選択。選択肢は5つです。
「つたない」は能力がとるに足らない、劣っている状態を表しています。この意味が出てくれば正解は10秒かからずに導けます。仮に意味があいまいでも、前後の文脈の流れから「私が話した英語が、留学生に自分の言いたいことを十分に伝えられるレベルではなかった」ことが推測できれば、解答は可能でしょう。
2.とってつけた=5.わざとらしいなので、この二つはまとめて除外。4.くち賢しい は言葉巧みな様子なので、真逆の意味です。正解は3.とるに足らない。
問2。シコウ錯誤のシコウを漢字表記にする選択問題。選択肢は5つです。
正解は「試行錯誤」で、これは小学5年で押さえておきたい四字熟語です。学生たちが留学生に、「平家物語」の説明を英語でしようとあれやこれや試みる場面です。文脈からも「思考」や「志向」でないことはわかりますが、やはりここは四字熟語の知識を活かして、数十秒で解答したいところです。
問3。「彼が言い放った言葉が忘れられない」理由の説明を選択肢から選びます。
選択肢は後半に重要な要素が書かれています。それぞれの選択肢の後半部分に注目しましょう。
そのうえで、傍線部の前後の段落を見ていきます。
まず直前の段落で、生徒たちと留学生とのやりとりを”微笑ましい光景なのだが”としつつ、この光景が心に残ったのは傍線部が理由だと述べています。微笑ましいは理由として否定されているので、3は除外。
次に直後の段落で、これまで古典を教えてきた上での経験と、この出来事をきっかけにして考える機会を得た二つの疑問が述べられています。二つとは、「古典は偉大」と考えられる精神性がどのように育まれたのか、そして古典を学ぶ意義について。さあ、もうお分かりですね。衝撃も受けていないし、心配にもなっていない。感動でもなく、考えるきっかけを得たのです。正解は5。ひねりや紛らわしさもない、ストレートな選択問題です。これも1分少々で解いてほしいところです。
問4。Ⅰ、Ⅱに入る言葉の組み合わせを選びます。
問1,問2と同じ知識問題です。文脈から推測する(判別する)こともできないので、覚えているかどうか、ただそれのみの問題です。漢字としては小学校6年生で習うもの。この学校はこうした慣用句やことわざの知識を問う問題が多いことが特徴です。
問5。「リベラル・アーツ」とは、どのように定義されているかの選択問題。選択肢は5つ。
傍線部が含まれる段落を確認していきましょう。「リベラル・アーツとは」「リベラル・アーツは」とまとめている箇所が2箇所もあります。「リベラル・アーツ」という聞きなれない言葉に身構えるかもしれませんが、問題文の中に答えは記されています。
広い意味では「人を自由にする学問」、もともとは「古代ギリシアで、奴隷から自立した存在へと解放されるために必要なもの」でした。それでは選択肢の後半部分に注目しましょう。そのままの文章が選択肢4ですから、迷うことはないかもしれませんね。
もしこの問題が「リベラル・アーツとはどんなものか、15字以内で説明しなさい」だとしても、注目すべきポイントは同じです。選択問題なので、2分かけずに解きたいです。
問6。Ⅲ、Ⅳに入る言葉を選択します。選択肢は5つ。接続詞と副詞の見分けです。
まずⅢの前後の文章を確認しましょう。前の文章では「リベラル」と「アーツ」それぞれの言葉の意味を説明し、Ⅲの後の文章では「リベラル・アーツ」という言葉の広義の意味、語源の説明へと続いていきます。前の文章があるから「リベラル・アーツ」の意味が分かり、かつ後ろの文章では前の文章をまとめて言い換えています。ここには言い換えの接続詞「つまり」が入ります。
Ⅳの前の文章では、「リベラル・アーツ」の端的な説明、後ろには「自らを自由にするもの」と続きます。この「自ら」とは奴隷のことです。この文章の前には「奴隷にとってリベラル・アーツとは」が省略されているのです。奴隷にとってリベラル・アーツ=自らを自由にするもの、という文章です。ですから、「確かに」を意味する「まさに」が入ります。
皆さんが一番わかりやすいのは逆接の接続詞だと思いますが、この2問はどちらも逆接ではありませんでした。見極めに悩んだときは、それぞれの枠に代入して読んでみて、意味が通るか確認することを忘れないようにしましょう。
問7。「このような能力」とは、どのような能力だと説明されているか。
選択問題で、選択肢は5つ。
このような能力、とまとめているので見るべきは直前の文章です。様々な情報を見極める力、変化に立ち向かい、課題を解決する力。これを指して「このような能力」と言っているのですね。
それでは、それぞれの選択肢の文末を見てきましょう。「課題を解決する能力」、そのものズバリ書かれている選択肢があります。前半は「目の前の様々な変化に立ち向かい」、これも確認した「このような能力」と相違しません。正解は3。紛らわしい選択肢もありませんので、難易度は決して高くありません。
速く解くためには、選択肢を読む前に問題の「このような能力」が何を指すかを把握すること。これはどのような問題でもいえることですが、「何を尋ねられているか」を明確にしないまま、選択肢を読んだり問題文の中から正解を探そうとしても、時間がかかるだけで正解には辿り着けません。焦って答え探しに向かう前に、設問の意図を把握するクセをつけましょう。「急がば回れ」、です。
問8。本文を通して筆者が伝えたかった事を選択する問題。選択肢は5つ。
最後の2段落に筆者の意見がまとめられています。①古典は先人たちの思考と知恵の結晶である。②先人たちの課題解決の経験は、変化に立ち向かう現代社会の我々には手がかりとなる。③リベラル・アーツは現代社会に生きる我々を自由な存在として開放してくれるはずである。④古典を学ぶ意義について考えることは、自由への大きな一歩を踏み出す瞬間になるだろう。
ではこれを踏まえて、各選択肢の後半部分を見てきましょう。この設問、選択肢前半部分は筆者の意見に添うものが複数あり、選択肢全てから正解を考えようとすると混乱するでしょう。
再度確認です。選択問題は、後半部分に重要なことが書かれています。まずは後半部分をみる。そして、1つに絞れたら文章全体を見る。すると、②に合致する選択肢が1つだけあります。他はすべて①~④に合致しないので、ここですでに1つに絞れます。この選択肢の前半部分は①に合致します。よって正解は4です。
正確な読解と知識の積み重ねを問われている
大問2は文章量も多くなく、「リベラル・アーツ」という耳なじみのない言葉に躊躇するかもしれませんが、設問自体はどの学校でも問われるような標準的な問題です。
選択問題が多いので、後半部分から確認するというセオリー通りに冷静に対応していきたいところです。このあとにやや難易度があがったり、総合的に考える設問がありますので、こういった定石通りの問題はスピーディーに解けるように、正確な読解力を積み上げていきましょう。
また、知識のみで解ける問題が多いこともポイントです。語学において、日々の積み重ねは必須です。1日でも早く、毎日5分でも3分でもいいので、漢字や慣用句、ことわざを学ぶ時間を設けてください。保護者の方とクイズ形式で学ぶご家庭もありますので、負担に感じずにできる方法を見つけるのが良策です。