過去問を知り、学校を知る。2校目は慶応義塾中等部です。

港区三田に位置する、慶應義塾中等部。当塾がある世田谷区野沢からは約1時間で通えます。

慶応義塾中等部が大切にしていること・卒業後の進路

慶應義塾中等部は、生徒が将来円満な人格と豊かな人間性をもつ人になることを教育目標としています。そのため、中等部では「独立自尊」という理念で、自分も相手も尊重する中での「本当の自由」を味わい学ぶことができます。授業では幅広い知識を身につけること、幅広い経験を積むことに重点を置いています。

卒業後は98%が推薦で併設校に進学します。男子は4校、女子は3校のいずれかに進学可能です。そして成績に問題がなければ、原則として慶應義塾大学に推薦されます。直近の慶応義塾大学への進学率は98.6%でした。

2023年度入試の傾向

2023年度入試では、出願者が前年度比較で▲12.8%でした。かといって入りやすくなったわけではなく、伝統と実績のある学校の難易度は変わりません。特に慶応義塾中等部入試の国語は独特な問題が多く、なるべく早く過去問に取り組む必要がある学校といえるでしょう。

国語の試験時間は45分。100点満点で、大問5問という出題形式でした。傾向は過去問と大きく変わりません。文字数は約5200字。決して膨大な量ではありません。難解な文章ではないのですが、文中の語句は難易度が高めになります。普段から語彙力を高めることを意識した学習をする必要があります。また、「総合的知識問題」という時事用語と国語の要素を問うもの、「文学史」を問うものもあります。普段から新聞やニュースを意識的に見て、「大人=社会人としての知識」に触れる時間を持ちましょう。また、これらの問題に対応するためにも、読解問題は確実に得点しつつも時間をかけないことが求められます。

大問1 小説

主人公は私立中学3年の拓朗。友人の良夫と学校の職員の方々。

良夫が警備員の青柳さんに朝の挨拶をしているところから始まる物語。良夫の考えを聞いた拓朗は、父親との対話を通して自分と世の中とのかかわりについて考えます。その後、拓朗は良夫と一緒に、青柳さんに元気よく挨拶できたのでした。

文章は読みやすく、設問も難易度は標準です。確実に得点する必要がある大問です。

問1。良夫の挨拶の様子にふさわしい言葉を選びます。良夫自身が「きもちよくなーい?」と発言していることはもちろん、僕(拓朗)が感じたことが2点あります。まず、「あまりにも堂々として」いたこと。第2段落の終わりの僕のセリフ「ヨッシーっていつも・・・きちんと挨拶しているの」からは、良夫の挨拶に良い印象を抱いたことがわかります。選択肢は5つありますが、肯定的な、プラスの表現は1つだけですから、難易度は低めの問題です。答えは「清々しい」ですね。

問2。「いたって」の言い換えに不適当なものを選択する、語句の判別問題。まずは傍線部の前後の文章から考えます。拓朗の問いに対して、良夫は回りくどい説明などを一切することなく、たった一言、自分の考えをシンプルに表しました。この「いたって」は「程度がはなはだしいさま」、つまり良夫の答えがとてもシンプルであるということを表しています。さて選択肢(5)は解答ではないことがわかりました。残る4つ、どれも「とても」の言い換えとしては正しいように思えます。しかし、この中にひとつだけ「程度ははなはだしい」のですが、それがマイナスの要素を含んでいるものがあります。答えは(1)「極端に」。これは「普通の常識や程度から、大きく外れている様子」となっています。ほかの4つは程度のはなはだしさを表しているだけなので、良夫の答えのシンプルさを強調するのみです。しかし(1)「極端に」では、「良夫の答えが普通の常識から大きく外れるほど」シンプルであると、拓朗が感じてしまったことになります。ですが問1でもみたように、拓朗は良夫の清々しい挨拶を否定的には捉えていないのです。

語句の正確な理解とともに、登場人物の心情の理解も求められる問題でした。ですがこれも難易度は高くありません。おおよそ1分程度で正解にたどり着く、正確性とスピードが必要です。

問3。「ドキドキしてきた」理由を問う問題です。傍線部をよく見てみましょう。今、まさに「ドキドキしてきた」のであって、「ドキドキしていた」のではないことに注目です。ドキドキしていない状態からしている状態へと移りつつあるのであって、もうすでにドキドキしてしまっているのではないのです。ですから、選択肢も同様に状態変化があるものを選びます。選択肢は前半、後半に分けられるものがほとんどですが、決め手は後半にあります。(1)~(5)の選択肢の文末を見てみると、状態変化があるものは1つしかありません。正解は(4)です。前半部分も文脈とズレはありません。まずは設問の意味を正確に把握する。これによって、選択問題は解答時間を短縮することが可能です。

問4。「むなしく感じられた」のはどうしてでしょうか。良夫の本音は、先生以外の学校関係者にきちんと挨拶できない人を快く思っていない、というものでした。それを聞いた拓朗は問3でみたように、「自分のことを言われているようで不安になってきた」のです。

ですから、拓朗は自分のために「守りに入って」言い返してみました。ですが良夫の明確な意見に対し、拓朗はその場しのぎの言い訳程度しか言い返せません。この問題は消去法でなく、即座に5を選べなければ、問3ともども失点してしまいます。

問5。抜けている文章が入る場所を選びます。指示された文章に接続詞や指示語があれば、そこから判断することも可能です。しかしこの文章にはどちらもありませんので、内容から判断していきます。

「梅沢さんは事情を聞くと…」とありますので、この文章以前では梅沢さんは事情を知りません。また、この後では事情を知っているのです。

(ア)は良夫が用務員室に向かう場面。(イ)は梅沢さんがノートのことも心配してくれる場面。もうお分かりですね。文章が抜けているのは(イ)の前ですから、正解は2です。

ちなみに、(イ)の文章中「ノートのことも…」この「も」が重要です。「ノートのことを」であれば、梅沢さんはノートのことしか知らない。けれど「も」があるために、梅沢さんはノートの他に良夫の困り事を知っていることになります。この小さな助詞1つで状況が大きく変わる、これこそ国語の醍醐味であり、皆さんを悩ませるところでもあります。文筆家の方は、こうした助詞1つも選び抜いて文章を書かれます。であるからこそ、この助詞の違いに気づくことは、文章を書いた作者の「言いたいこと」を素早く理解するカギとなります。ぜひここを意識して問題文を読むクセを付けてください。読解がずいぶん早く、正確になります。

問6。Eに当てはまる言葉を選びます。拓朗は良夫の何かとの差に打ちひしがれたのです。良夫はいろいろ考えて行動することができている。自分は世の中の流れに乗っているだけで、何も考えていない。何かが、良夫に比べて足りないことを嘆いています。そのために良夫のように行動できないのですが、では良夫がした行動とは何か?自分たちの学校生活を支えてくれている人達の名前を調べ、一人一人を名前で呼ぶこと。そのうちの一人、青柳さんの親切な行動に気づいたこと。この行動に当てはまる選択肢は6・視野の狭さですね。記憶力のなさは、もともと拓朗が何かを知っていたことが前提になるので、正解ではありません。そのほかの選択肢も、不適当なことはいうまでもありません。

問7。拓朗のお父さんが言いたかったことは何か。

拓朗とお父さんの会話を見ていきます。良い友達を持ったとか、良い友達をもつお前もいいやつだ、などと 語られます。お父さんの喋りはまだまだ続き、「…お父さんは考えているんだなぁ。」と締められています。お父さんはご自分で言いたいことをまとめています。正にこの部分を条件に沿ってまとめます。まとめるので、【①同じことを言っている部分は片方をカットする②例はカットする】とし、簡潔に、文字数以内に収めつつ、要点を全て入れ込むようにします。

「良夫くんみたいに」は、まさに例示です。ここは全てカット。「身近な人」とその後の「その人」は同じことを言っています。ですから代名詞の「その人」をカット。残ったのは「みんなが身近な人とも対等な関係で、気遣うことができれば、世の中はもっと平和になる」。このままでは40字。あと10字調整が必要です。

お父さんが最も言いたいことは、「何かをすれば、世の中はもっと平和になる」と言うこと。ですから「世の中はもっと平和になる」この12字は減らせません。絶対に、重要な要素を削ってはいけません。前半を絞り混みましょう。

主語と述語は削ると意味が通じなくなるので、「みんなが」「気遣うことができれば」は要素として残します。これで14字。あと4字で目的語をまとるのは難しいでしょう。そこで意味を変えずに言葉を変えます。「みんなが」はどうにもできませんが、「気遣うことができれば」は「気遣うことで」にできます。残りの8字で目的語を完成させます。

「身近な人」と「対等な関係で」を残すのはお分かりですね。このままでは意味が解答の読み手に伝わらないので、調整していきましょう。例えば、「身近な人を対等に」これで8字です。繋げると、「みんなが身近な人を対等に気遣うことで世界はもっと平和になる」(“ということ”に繋がります)これで30字ぴったりです。

25~30字を全て考えて書いて、字数や意味が合わないからと書き直せばその分時間が掛かります。気持ちも焦ってきて、普段の落ち着きがあれば取れる問題も、間違えてしまう恐れもあります。

読解もそうですが、とにかくブロック分けすることをクセ付けましょう。必ず入れる要素で何文字使うか。自由に調整出来るのは何文字あるか。調整するのは自由に出来る部分。採点は文字数、必要要素が入っているか、日本語として意味が通じる文章になっているかで行われます。自分が気に入る文章になっていなくても、美しい文章でなくても、採点要素を満たすことが求められていることです。また、このタイプの問題は数をこなせば確実に力がつきます。面倒がらずに取り組みましょう。

慶應義塾中等部としては標準的

この大問1は難易度としては標準的。できれば問題文を3分少々で読み、問題には10分くらいで解答してしまいたいところです。

文章自体は難しく感じないと思います。細かな助詞や語彙の見極めを誤らないよう、丁寧な読解力が求められる問題です。

それでは次回は問2以降を見ていきます。