前回に続き、女子御三家の一校、雙葉中学校の入試問題を取り上げます。
大問1は熱帯雨林に咲く花、ラフレシアの不思議な魅力について書かれた文章でした。そして、選択問題と要約問題で構成されていました。
大問2も選択問題や語彙力を問う問題が多いのですが、小問8(2)、小問9、小問10と要約と記述問題が続きます。おそらく苦手な生徒さんが多いであろうこの問題について、考察していきましょう。
主人公の心情を説明する
小問8(2)はある場面での主人公の心情を説明する問題です。このタイプの問題は入試問題では頻出ですから、確実に得点したいところです。問題の傍線部④のあと、次の文章が続きます。
「生まれて初めての言葉だった」
これが最大のヒントです。この文章は事実をのべたものであって、主人公の心情ではありません。この事実を受けて、主人公はどう感じたのでしょう。主人公は全盲の女性です。それまで主人公は見えないことのために、自分は社会から疎まれる存在なのだと思っていました。それが先生からの「生まれて初めての言葉」で、「見えないこと=マイナス」は主人公次第で「才能=プラス」に変えられるという新しい気付きを得られたのです。ではこれを解答として整えていきましょう。
記述問題はすべからく同じですが、まず結論を明らかにする必要があります。いわゆるゴールですね。ゴールが明らかにならずにスタートしても、道に迷うだけです。ではこの問題のゴールはというと、「先生の言葉を聞いた時の主人公の気持ち」です。先ほど確認したように、主人公は自分が変われるのだと感じることができました。でもこれだけでは、解答として不十分です。なぜでしょうか?問題文には「主人公の心情を説明しなさい。」とあります。説明とは、そのことを知らない相手にもよくわかるように理由を明らかにすることです。ですから説明を求められたときは、問題文を全く読んだことがない相手にも伝わるように丁寧に親切に、そして時間と解答用紙には限りがありますので、簡潔に書き記す必要があると思ってください。
それでは主人公が自分が変われるのだと感じることだできたのは?それは先生の言葉があったからでした。でも簡潔に記述したいので、全てを抜き出すことはできません。先生の言葉を言い換えましょう。「~な言葉で、自分は変われるのだと感じた」のです。そして「変わる」のはマイナスからプラスへ、でしたね。それでは前向きな、とか難しく言うと発展的な、ポジティブな、などになるでしょうが、中学受験では前向きなで十分です。「先生の前向きな言葉で、自分は変われるのだと感じた」で、主人公の心情は説明できますか?もしこれが解答として十分であるならば、傍線部④の直前の段落は必要ないと思いませんか?
直前の段落で、主人公は先生に出会う前の事を述べています。見えないために、社会から疎まれるような言葉を主人公はずっと聞いてきたのです。そして傍線部④の言葉を聞き、「生まれて初めての言葉だった。」と述べるのです。先生の言葉通り、見えないことを才能に変えるのは主人公自身です。けれど主人公にとって、そのきっかけをもたらしたのは他でもない先生、そして先生が主人公に言った言葉でした。つまり傍線部の言葉は、主人公にとって「それまでの自分が聞いてきた言葉とは違う、自分のマイナスはプラスへと変えることができると思わせてくれる前向きな言葉」でした。
設問と解答のスタイルを揃える
もし設問が「傍線部④は主人公にとってどんな言葉だったか」であれば、これで解答は完成です。でも、設問は「主人公の心情を説明しなさい。」です。これに対し、「~前向きな言葉」では語尾がおかしいですよね。この設問に対してであれば、解答の語尾は主人公の心情である必要があります。解答の語尾は、設問に応じて変わります。これは全ての記述問題に共通なので覚えてください。記述問題はまずゴールを明確にする必要があると先に触れました。ですから設問を読んだとき、「解答は~になる」と語尾が浮かんでくるようになるまで練習問題をやりこまないと、受験本番で記述問題の得点を挙げることはできないと思ってください。
記述問題や国語に限らず、全ての教科に言えることですが、第一歩として重要なのは「何を問われているか」を理解する力です。「何を答えるか、書けるか」はその次の段階なのです。ただ学校の授業では、何を問うているかは教師が教えてくれます。ですから生徒さんは「解答を何と書けばよいか」に集中すれば得点できます。しかしいざ受験となったとき、または予備校主催の教科書ベースではない試験に臨むとき、「何を問われているか」を教えてくれる人はいません。「答えをかけない」と悩む生徒さんは、「何を問われているか分からない」ことのほうが多いのです。つまり、文章の意味を解する「読解力」が足りていないのです。
理由を問われれば「~だから」、どういうことか問われれば「~こと」といったふうに、設問と解答のスタイルを揃えること。設問の意味が理解できてこそ、できることです。
それでは主人公の心情を説明するように、「それまでの自分が聞いてきた言葉とは違う、自分のマイナスはプラスへと変えることができると思わせてくれる前向きな言葉」を修正しましょう。
「それまで聞いてきた言葉とは違う、前向きで応援してくれるような言葉で、自分は才能を伸ばすように変わっていけると思わせてくれた」
理由を説明する
それでは説明記述問題の解答のためのステップをまとめましょう。
①設問の意味を理解し、語尾のスタイルまで決める
②結論を明らかにする
③いったん文章を書き、説明が足りない点がないか確認する。
④逆に、簡潔にできるところはないか確認する。
ではこれに従って、次の問題 小問9を解答しましょう。どうして英語の先生は主人公への指導の態度を徹底していたのでしょうか。
まず、ステップ①。先ほどの問題と同じく「説明しなさい」ですが、よく設問を読んでみると、「どうしてだと考えられるか、説明しなさい」なのです。つまりこれは理由を聞いているのです。ですから解答の語尾は「~から」「~ため」となります。ちょっと分かりにくいかもしれませんので、こう考えてみてください。「英語の先生が主人公への指導の態度を徹底していたのはどうして?」と聞かれたら、なんて答えますか?かりに「主人公が大切だったから」だと、会話として成り立ちますね。でも、「主人公が大切だったこと」だったら、会話が成り立ちません。会話が成り立つということは、問いかけに正確に答えているからです。ポンポンと語尾が浮かんでくるようになるまでは、設問文と会話してみましょう。
ではステップ②。傍線部⑤のひとつ前の段落を見ましょう。先生は他の生徒さんの前で主人公への配慮を堂々と実行しつつ、けっして甘やかすことはありませんでした。甘やかすことがない点が徹底されていたのはなぜでしょう?甘やかすことが主人公にとって、良いことではないからです。主人公は英語の教室に通ってる時点では見えないことがマイナスでした。これが他の生徒さんと異なる点です。マイナスがマイナスのままだったら、主人公は変われません。だからそうならないように、主人公がマイナスをそのままにしているときに甘やかさないのです。それが傍線部⑤の直前にある、「ごまかしたりすると」答え直させる。見えないからといって、ごまかすことに慣れてほしくなかったのです。
ステップ③、「見えないからといって、ごまかすことに慣れてほしくなかったから」に足りないところはないでしょうか。見えないこと=ごまかすことではないですよね。もう一段階入って、見えないこととごまかすことはつながります。傍線部⑤直前の文を見ましょう。「間違えれば厳しく注意され、ごまかしたりすると・・・」英語の授業中の出来事です。授業中にごまかすのは、わからないときです。間違えれば厳しく注意されるから、ごまかすのです。そしてごまかす口実が見えないことになる。先生が避けたいのはここです。ですから「見えないからといって、わからないときにごまかすことに慣れてほしくなかったから」となります。
ステップ④。余分な文はないですね。これで解答が完成です。
記述問題は慣れる事
ここまで二つの記述問題を見てきました。どちらも問題文をまとめて要約する形で答えることができました。最後の小問10は自由記述になります。これはまた、次回にしっかり述べたいと思います。
記述問題は慣れると確実に点が取れ、楽しくなっていきます。形があるものなので、覚えてしまえば怖いことはありません。はじめは指導者と伴走しながら数をこなしていきましょう。まだ、時間があります。